鈴木豊子(特定社会保険労務士)
休日には法定休日と所定休日がありますが、両者を混同したり、正しく理解していない担当者も少なくありません。ここでは、法定休日をめぐる取扱いと実務上の留意点を解説します。
労働基準法では、使用者は毎週少なくとも1回の休日、または、4週間を通じて4日の休日を与えなければならないと規定されています。
一方で、原則として1週40時間、1日8時間という労働時間の制限もあります。
1日7時間や8時間働くことになっている会社の場合、1週間に1度の休日では、週の労働時間が40時間を超えてしまいます。
したがって、休日をもう1日設けなければいけないことになります(変形労働時間制等を採用していない場合)。
2日ある休日のうち1日が法定休日、もう1日は会社が自由に決められる所定休日(法定外休日)となります。
会社の創立記念日や国民の祝日を休日と定めた場合も、それらは所定休日となります。
休日の1日は暦日を指し(8時間3交替制や一部の例外業種を除く)、午前0時から午後12時までとなります。
法定休日について法律では、曜日の特定や一斉に休むことまでは要求していません。
シフト制により個人別に毎週1日、または4週間を通じて4日の法定休日と、その他の所定休日を会社の都合で自由に設定することもできます。
時間外や休日に社員を労働させるには、労働基準法36条に基づく労使協定(通称サブロク協定)を締結し、会社を管轄する労働基準監督署長に届出をする必要があります。
ここでいう休日とは、1週1日、または4週4日の法定休日のことです。
この協定書を提出していれば、法定休日に労働させても違法とはなりません。
そのほか、災害等避けることのできない臨時の必要がある場合は、事前に会社管轄の労働基準監督署長の許可を得て、時間外・休日労働をさせることが認められます(事態が切迫している場合は事後の許可でもよい)。
法定休日と所定休日の違いは、
休日出勤したときの割増賃金の割増率です(図表1)。
週休2日制の場合、同じ休日出勤でも、法定休日に出勤すれば休日労働、所定休日に出勤すれば週40時間を超えた時間について時間外労働と、扱いが異なります。
それぞれ割増率が違い、同じ時間働いても賃金額が変わります。
平成22年4月1日からは、1か月に60時間を超える時間外労働について、大幅に割増率が引き上げられました(一定条件の中小企業は適用猶予中)。
その60時間をカウントする場合は、法定休日労働の時間を含みませんから、法定休日が特定されていない場合、割増賃金を計算する際に問題となることがあります。
なお、図表1にある25%、35%という数字は、法律で決められた最低値です。これ以上の割増率を会社が独自に設定することは問題ありません。
就業規則で法定休日の曜日を決めている会社があります。
たとえば、週休2日制で土曜日と日曜日が休日の場合、日曜日を法定休日としているような場合です。
しかし、法定休日の曜日を決めなくても、結果的に1週間に1日の休日があれば違法とはなりません。
そのため、就業規則に法定休日と所定休日の区別を記載していないケースもよく見かけます。
その点について行政当局は、法定休日が特定されていない場合には、暦週の後に来る休日を法定休日とする見解を出しています。
就業規則で週の起点となる曜日を決めることもできますが、一般に「暦週」というと日曜日から土曜日までを指します。
週の起点となる曜日を特定していないと暦週で1週間を考えるので、土日の週休2日制の場合、土曜日が法定休日となります。
裁判例では、未払い残業代の金額を確定する際に、法定休日について問われたケースがあります(東京地判平20・1・28、日本マクドナルド事件)。
この事例では、労働基準法上の管理監督者には当たらないとして残業代の支払いを求めた店長に対し、未払い残業代を計算する際に就業規則上で店長に休日を特定する規定がなかったため、法定休日の特定が問題となりました。
裁判所は、毎週1回は必ず休日が与えられなければならないのだから、暦週の日曜日から土曜日までの間に1回も休日がない場合は、週の最終日の土曜日を休日(法定休日)とみなすのが妥当と判断しています。
一方、土曜日と日曜日を休みとする週休2日制で、法定休日を特定していなかった会社について、暦週の後順の土曜日が法定休日だとした会社側に対して、「旧来からの休日である日曜が法定休日であると解するのが一般的な社会通念に合致する」として、日曜日を法定休日とした事例もあります(東京地判平23・12・27、HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件)。
以上のように、主として未払い残業代を確定するときに法定休日の特定が問題となることがありますが、考え方が必ずしも統一されているわけではありません。
法定休日を特定するかしないかは、会社の判断に任せられていますが、法定休日を特定したほうが割増賃金の計算の際などに対応しやすいでしょう。
会社としてトラブルに備えることもできますし、行政当局も法定休日を特定することを推奨しています。